ビジネスホテルの快適なベッドで目覚めたはずだが、充分に疲れがとれたという実感はない。
僕の場合「疲れのとれる睡眠」とは、寝具のクオリティの問題ではなく、自分のもの(自分のアパートの部屋とか自分のテントとか)かどうかにかかっているのだなあと、改めて実感する。
そんなわけで僕は、泊めてもらうとか、宿やホテルに外泊するとかは、本当はあまり得意ではない。
ところで、泊まったホテルは、ホテル・ハイランド。Rさんとのコンタクトをすませた後に、時期柄満室の多いホテルの中から探し回って見つけたホテルだ。7000~8000円のホテルでも満室のところが多かったのに、一泊3900円(税別)のこのホテルには空室があったのだ。根気強く探した甲斐があった。部屋の広さなどは値段なりだが、北海道ツーリングに来て札幌で一泊と考える方には、お薦めだと思う。さすがに札幌市内にキャンプ場は無いし。
僕が起きたのは9時頃だった。他の宿泊客もチェックアウトしようという時間帯である。
部屋と単車を停めた場所とを2往復して荷物を運び出し、パッキングをした。恐らくは最後のパッキングとなるはずだった………。
パッキングを終えようかという頃、僕のすぐ近くに単車を停めていたライダーさんが現れ、パッキングを始めようとしている。僕が目礼すると、
「いやあ、今年は(天気が)ダメでしたね」と声をかけてくれた。実感のこもった一言である。
発言から察するに、2度以上北海道のツーリングを楽しんだ方で、天気がダメでない北海道を満喫したこともある方なのだろう。羨ましいなあ。
「そうでしたね。僕は今年が初めてだったんですが、雨には参りましたね」と、僕も実感を込めて言った。
先にパッキングを終えた僕は、話しかけてくれた方に挨拶し、ホテルを後にした。
札幌駅近くの土産物屋で、予算と荷物の余裕の許す限り買い物をした。道中に土産など買っていたら、荷物になるばかりだと思っていたので、最終日の札幌でまとめて購入する予定だったのである。
北海道の名産といえば、やはり海産物や農産物だが、これからまた炎天下のツーリングをする事になるかも知れないことを考えると、当然そんなものは買えない。
僕は、定番の「白い恋人」やバター飴、そして北海道限定と銘打たれたキャラメルなどを購入した。これでも結構考えたのだから、受け取った方々、分かって下され。
買い物を済ませ、函館へ向かおうとした僕だったが、「ちょっと待てよ」と思った。
札幌在住のネットの知り合い(Rさんとは別の方)から、「みよしの」というカレーと餃子の店が札幌にあると聞いていたのだ。特別素晴らしいカレーとは聞いていなかったものの、チェーン店で、安くて……と、旅行に発つ前に得た数少ない「食」の情報であったし、カレーも餃子も好きな僕としては、独特な取り合わせだと思いつつも、ちょっと立ち寄ってみたかったのである。
市街地をグルグルと探し回ったが、大きな通りに面したところに「みよしの」なる店は見つからなかったので、繁華街のなるべく邪魔にならなそうな場所に単車を停めた僕は、鼻をくんくんさせながらカレーの臭いを求め、運良く「みよしの」を見つけることが出来た。
お昼時に近い時間帯だったこともあってか店内は結構混んでいた。メニューを見ると、餃子定食、餃子カレー……など、餃子とカレーの店と聞いていたとおりのラインナップである。牛丼の値下げ合戦を意識しているのかいないのか、お値段も普通のカレーで280円、餃子一皿(6個)が200円と、随分とお手頃だ。
どうせならどっちも賞味したいと思った僕は、餃子カレー(カレーの上に餃子が3個乗っているやつ。360円)を頼んだのだが……やはり、別々に食べた方が良かったかなあ……と思った次第である。料金設定から考えると、無難な水準だと思うし、札幌へ来たらまた立ち寄ってみたい。
店内が混んでいたこともあって写真は撮らなかったが、読んでいる皆さんが想像するのと大差ないことは保証しよう。
……それにしても、僕の旅行記の「食」はB級だねえ。(汗)
望羊中山の道の駅にて。北海道から離れる日にこんな晴天になるとは……。
さあ、もう思い残すことは何もない……といったらウソになるが、それも今更の話。さっさとフェリーに乗らなくては。僕は、国道230号に乗り、函館を目指す。
ホクレンの旗のことを知らなかった上陸直後に通り過ぎた道南エリアだったが、ホクレンのスタンドを見つけたので給油をしておいた。これで、3本目のホクレンの旗をゲットすることができた。この給油で函館までは余裕で到着できる。
昨晩の睡眠が不充分だったのと、いい加減蓄積してきた旅の疲れのため、札幌から50kmちょっとくらいにある道の駅で休憩し、昨日は忘れがちだった旅行記のための写真を撮ったが、デジカメをスケッチ道具用のDパックに入れていることに気づき、慌ててパッキングをほどいた。途中、ネットから外れて転がったロールマットを、見知らぬ観光客に拾って貰ったりなどした。みっともないったらありゃしない。
出発前に、北海道へツーリングに来たライダーさんのホームページを幾つか拝見したが、旅行記をUPするために、文章と写真のバランスを考えて写真を撮って……と考えながら行動するのは、意外に難しいことがよく分かる。やはり旅行のキャリアや、周到な計画あってなせる業なのであろうと思える。
写真を撮ったのち、僕は今度こそと腹をくくり、函館を目指した。夕方頃の到着になるだろう。
それにしても、北海道の滞在の最後の日に、皮肉なまでの晴天であった。
その後は、ずーっと230号線を南下し、やがて5号線へ。
来るときは闇夜で見えなかった海が左手に見える。道はなだらかなカーブが続き、走っていて気持ちいい。正統派ライダーさんが、早朝から起きだして走り回ろうとする気持ちが、今更ながらよく分かる。やはり北海道にはこんな気持ちの良い道路が沢山あるのだから、夜中に走り続けるのは愚の骨頂なのだろう。次来ることがあるとしたら、もう少し景色を楽しみながら走る機会を増やしたいものだ。