昨年の分の旅行記を書き終えていないのに、お盆休みが迫ってきてしまった。僕はまだ、今年も北海道へスケッチ旅行へ行くべきかを悩んでいた。
初の長期スケッチ旅行であり、初の北海道上陸であり、初のソロツーリング&キャンプを敢行した昨年だったが、悪天候に祟られ、最大の目的であるスケッチにどこか不満が残っていたのだ。
「水辺の風景のスケッチ展」となる個展を成就させるためにも、北海道での枚数的にも質的にも満足の行くスケッチが出来なければ、旅行の意義は半減だったはずなのに、それが不充分に思えたのは、旅行として考えれば充実していたから良しと出来るものでもなかった。
やはり描き残したものがあると思えたし、まだ見ていないものも沢山ある気がしていた。やり残したことがあるのを自覚していながら、それを放っておいて良いものとも思えない。
かといって、何としたことか、今年も大型の台風が迫っていて、現地の人たちが「異常気象だ」と言っていたほどの昨年以上の悪天候が予想されるし、昨年と比べて経済的な部分で苦しいなど、ネガティブな要素も多い。
生まれつき間の悪い男である僕が、こんな状況で北海道へ行ったとしても、去年と同じような結果になるか、あるいは去年よりもひどい結果になるのではないだろうか……そんな嫌な予感も頭を過ぎる。とてもではないが、「去年のようにはならないだろう」とは思えない状況だった。
左がツーリングマップル(¥1,600-)、右は昨年携行したマップルの全国地図。サイズ的にも内容的にも北海道へ行くならツーリングマップルが適している。(実感)
……などと迷いながらも僕は、今年のツーリング&スケッチ旅行に対して、少しずつ準備を始めていた。
準備一つせずに時期が過ぎ、「ああ、行けば良かった!」と後悔するよりは、いつでも行けるようにしておいてそれでも抵抗があるようなら取りやめれば良い……と思ったのだ。テント泊をしてスケッチするなら北海道でなくても良いのだし、準備した物を無理に今年使わなくてもいのだから。
そんなわけで、まず僕はツーリングマップルを購入した。昨年のスケッチ旅行は、全国地図がたよりだったため、非常にルートを検討するのに手こずったし、得られる情報も少なかった。出発前までの情報収集でツーリングマップルという地図の存在を知ってはいたが、全国地図があるから構うまいと思い、用意していかなかったのだ。だが、道中に出会ったライダーさんのほとんどが携行しており、キャンプ場やユースホステルやライダーハウスなどが詳細に書き込まれているなど、ツーリングに特化した地図であるツーリングマップルは、チラチラと見せて貰うだけでも非常に便利そうで、次に北海道へ行く時は必ず持っていこうと思っていたのであった。
「何だ、やはり北海道へ行くつもりマンマンだったんじゃないか」と思われそうだが、職場の近くに本屋さんがあり、たまたま目に留まったから購入しただけのことである。
実際に購入して中を見てみると、「ああ! これを持っていれば、食にも観光にも便利だったのに……」と思うことしきり。北海道ならではの風景写真や道路などの写真も出ていて、いやが上にも気分を高揚させる。
「あ”~、やはり行くべきかなあ」と、また悩む。
マントルの図(もちろん右)。どんな理屈があるのか分からないが、緑の方を上にしてガスランタンにセットする。どんな風にセットされるかは、後で出てくる画像を参照して下さい。。
昨年の旅行で、ストーブやクッカーなど、ソロキャンプに必要な物は買いそろえてあるので、あとは消耗品を用意するだけだ。相変わらず悩みつつも、「北海道でなくても使える物だし、非常時にも役に立つ……」と改めて思い、釣り具、キャンプ用品の上州屋へ出掛けたりもした。
その時のこと……。
「すみません。これと同じメーカーでちょっと前の型のランタンだったと思うのですが、マントルはどれが合うんでしょうか? 一つか二つ残っていたと思うんですが、紛失してしまって、どれが良いのか分からなくなったんです」と、店員さんに聞くと、
「ええっと、そのメーカーのそのタイプだと、このマントルになりますね」とのお答え。
「そうでしたか。それからもう一つお願いが……。去年こちらのお店で購入したストーブが、最後に使った時に火がつかなくて、ボンベが空になっていたのか、不具合なのかが分からなくて、点火するかどうかを確認したいんですが……」
「いいですよ。そういう時のためのボンベがありますから、それを使ってチェックしましょう」
「どうも。これがそのストーブです」と、僕はストーブの入ったケースを差し出す。
「あ”」と、店員さんも僕も絶句する。
「紛失してしまって」と、僕の言ったマントルは、ストーブと一緒にケースの中に収められていたのだ。昨年、道具をしまい込む時に、無くしたりしないように、ソロキャンプなら必ず持っていくストーブのケースに入れておいたようだ。これでは、この中を見ない限りマントルが見つかるわけはない。片づけすぎ……というヤツだ。
店員さんがストーブをボンベにセットし、点火してみると、何も問題はなかった。
僕は赤面しながらお礼を言い、「マントルは……あと二枚あるので、またにしますね」と、店員さんに言い、そそくさとレジへ向かった。
その他にも、昨年あると便利かと思えたヘッドランプと、昨年まで使っていてボロボロになってしまったアルミを貼ってあるロールシートを新調し、さし当たって揃えておいた方が良いものを揃えた。