便利に毒されし者の北海道おっちょこちょいスケッチ旅行・2002年

出発からフェリーに乗るまで

8月9日:出発

当初は、休みに入る金曜日に、ゆっくりと準備をし、仮眠を取って、猛暑を避けて深夜から朝までかけて青森へ……と思っていましたが、フェリーのターミナルで何時間もキャンセル待ちする時間の浪費を避けたかったので、金曜日の早朝からの予定を繰り上げて出発へと計画変更しました。シーズンとは言え、平日ならなんとかなるのでは……という、あてなき期待に賭けたわけです。そもそも僕は、物事を待つのも行列するのも大嫌いです。

出発直後のメーター
出発直後のメーター。21812.3kmを指そうとしている。

が! 準備に手間取り、仮眠をとれたのは明け方になってしまいました。三時間ほど(予定では二時間)寝た後、小一時間ほどかけて荷物を積み、10時半ごろ出発しました。

思えば、我が愛車のZRX400に、これだけ荷物を積んだのは、購入から五年経ってから初めて。いや、僕のバイク歴の中でも、これほど大量の荷物を積んだのは初めてだったので、パッキング(要するに荷物を積むこと)にも三十分近くかかりました。僕の旅行は普通のツーリングキャンプではなく、スケッチ旅行なので、恐らく一般的なツーリングライダーより15%位は荷物も多めになっていたと思います。

この日は、相も変わらぬ猛暑。キャンセル待ち対策とはいえ、こんなカンカン照りの日中に高速を走らなくてはならないかと思うと、気が滅入りましたが、悪いのは準備にモタモタしていた自分です(フェリーの予約も含め)。

練馬区の大泉から東京外環自動車道へ入り、川口J.C.から東北自動車道へ。この辺は方向オンチで東京の地理にも疎い僕でも、地図のルートチェックなしでもOKでした。

表記変更と東北自動車道の道中

積み荷満載です。蓮田S.A.にて。
積み荷満載です。蓮田S.A.にて。

一路北上。好天の高速をひた走ります。

週に一度くらいしか乗らなくなってしまった愛車ですが、大荷物にもへこたれず、エンジンは気持ちよく回ってくれます。

ただし、この暑さ! 高熱を出すエンジンのすぐ傍にある内股は、低温火傷になるのではないかと思うほどでした。

しかも、パッキングの仕方が良くなかったのか、荷物がずり下がり、お尻をぐいぐいタンク側に押し続けてきます。シートの後ろの方にお尻を据えれば、エンジンの熱をある程度回避できるのですが、大荷物があるためそれも無理。下手にお尻で荷物を押し返したりすると、素人パッキングが解ける危険が……。

同じく蓮田S.A.にて食べた「ベーコン男爵(260円)」。
同じく蓮田S.A.にて食べた「ベーコン男爵(260円)」。揚げたジャガイモの間にうっかりすると気付かないベーコンが挟まっている。まあ、S.A.の食べ物だから、こんなものだろう。

そんなわけで、過去に鹿児島まで高速で帰ったときにもそうしていたように、給油や休憩で停まるサービスエリア(S.A.)のトイレで、ズボンの内股を濡らし、乾くまでのつかの間だけでも熱を凌ぐ作戦を採りました。時折皮膚温を下げるだけでも、低温火傷対策としても効果があります。

ただ、トイレに入ってズボンの内股部分をたっぷり濡らして出てくると、まるで「間に合わなかった」かのようで、何ともカッコ悪いのですが、背に腹は代えられません。

……と、ここまで「館長」として書き進めてきましたが……。
この「館長」の口調では、バイクの旅なのに、疾走感、ドライブ感が出ません。そこで以下より、ライダーとしてのJobimに姿を変え、文章を書き進めることにする。要するに、敬体文から常体文に変えるだけなのではあるが。(苦笑) と、こんな具合に、メールやチャットでもよく見られる(○○)表記も盛り込み、感情表現に幅を持たせたい。

館長としてのJobimしか知らない方は面食らうかも知れないが、どうかご理解を。

では、続きをゴー!

偶然にもKawasaki車ばかり4台も。皆さん同じように積み荷満載。
偶然にもKawasaki車ばかり四台も。皆さん同じように積み荷満載。恐らく行く先は同じだろう。前沢S.A.にて。

ベンチに座っていたり愛車の傍に佇んでいたりすると、北へ行けば行くほど、すれ違う人に声をかけられる回数が多くなる気がする。
ライダー同士なら、声をかけられることは、どこにいようと珍しくないが、車やバスでの道中と思しき中年の女性や、おじいさんなども、気さくに声をかけてくれる。
僕が話しかけやすそうだからか、土地柄なのかは判然としないが、言葉のイントネーションからして東北近辺の方であることは間違いないだろう。
と、早くも旅の人情に触れ、癒される思いの僕であった。

日が暮れかかる頃には雲が出始め、時折小雨も降ったりもした。

前沢S.A.にて食べた「ジャンボ焼き鳥(正式名称と値段は失念。500円くらいだったか?)」。
前沢S.A.にて食べた「ジャンボ焼き鳥(正式名称は失念。500円くらいか?)」。ややしょっぱかったが、肉自体は美味しかった。
串ものを連続して食べているが、タンクバッグを片手に買い物するため便利という事情もある。
他のライダーさんは路肩にバイクを停め、レインウエアに着替えたりしていたが、「空が明るいし、こんな雨はすぐにやむ。レインウエアの必要なし!」と判断し、走り続けた。青森に着くまでは、幾度にも渡る長距離ツーリングで培ったカンがはたらいたのだが……。

さておき、ずり下がってくる荷物のため、股間がタンクと荷物の間に挟まれて圧迫され、痛み出した。

一瞬の強烈な打撃でも、じわじわと締め付けるようなものでも、男性が股間に感じる痛みが辛いのは同じである。休憩は給油だけと思っていたが、これはタマランと、給油は出来ないパーキングエリアなどでも休憩をおき、しばしの開放感に浸った。痛みの感覚が短くなり始めた岩手県あたりで、余程荷物を積み直そうかと思ったが、フェリーに乗ったらどうせ荷物を下ろすだろうし、その時にずり落ち対策を……と思い、時折お尻で、積み荷を押し戻しながら走行した。

ちゃっかり到着・あっさり乗船

日没後、冷え込んできたので冬物のフライトジャケットを着込んだが、それでも時折吹き付ける横風は、ギョッとするほど冷たく、ああ、東北に来たんだなあと、変なところで実感した。画像の前沢S.A.(岩手県南部)で、僕が行ったことのある最北地点(山形県・鶴岡市)を、すでに通り越していた。
これから先は行けば行くほど最北地点なのだと思うと、いたずらに気分が高揚した。

青森県に入ると、持続的に小雨が降り出したが、もう少しでフェリーターミナルだと思い、濡れるに任せて走り続けた。ろくに寝ずに、長時間走り続けていた疲れのため、面倒くさかったと言うのも本音である。

タンクバッグはこういうヤツ。金属のタンクに、磁石で貼り付けて固定する。
タンクバッグはこういうヤツ。金属のタンクに、磁石で貼り付けて固定する。持ち運ぶときに磁石がある分重いのが難点。

青森の出口で、料金所の方に「フェリーターミナルは近いんですか? すぐ分かりますかねえ?」と聞くと、「あんたもか」と言わんばかりの表情を見せ、丁寧に説明してくれたばかりか、B4くらいの大きさの地図まで下さった。
地図は有り難いが、こんなデカい地図、一体どうしたら……と迷い、結局タンクバッグの中に適当に折ってしまい込んだ。
指示通り進んでいくと、積み荷満載のCBRの大型を発見。これはしめた!とばかり、CBRの方に道案内を勝手にお願いし、ノコノコと追尾し、迷うことなくフェリーターミナルに到着。21時前であった。
東京→青森間の約700kmを、10時間と計算していたのだが、所要時間は約10時間30分。まあ、順当と言えるだろう。

係の方に誘導されて、駐輪場に着くと、積み荷満載のバイクが30台近くはいただろうか。船の大きさは不明ながら、この全部が乗るとしても、次に出航するフェリーか、その次くらいには乗れるのではないだろうか、と少し安心した。
「ああ、少々無理しても平日にここまで来て良かった……」と、思いながら手続きをしに行くと、“バイクのキャンセル待ち状況:2~3便後乗船可能予定”とホワイトボードに……。窓口の方に聞いたところでも「2便は待つんじゃないかなあ」とのこと。
「そんなに小さな船なのか? それとも、出航まであと1時間も無いというのに、これからうじゃうじゃとバイクが集まってくるのか?」と、信じられない気持ちになったが、この時期のフェリーに、数時間待って乗れるなら恵まれている方だと思い直し、気長に待つことに。
……と思いきや!! 間もなく呼び出され、1便も見送ることなく10時20分の便に無事乗船できた。ホッとしたような、肩すかしを食らったような、複雑な心境だ。
船室で一緒になった他のライダーさんたちも、口々に「あの係員さん、悲観的すぎるよなあ」と言っていた。
何にせよ、大きな関門であったフェリーへの上陸は、無事通過できたわけだ。(安堵)

次を読む

02年の旅行記のtopへ

旅行記のtopへ

美術館に戻る