便利に毒されし者の北海道おっちょこちょいスケッチ旅行・2002年

初のスケッチとライダー宴会

8月11日・初のスケッチ

管理棟をバックに、自分のテントと愛車を朝食後に撮影。
管理棟をバックに、自分のテントと愛車を朝食後に撮影。この日の午前中も、ご覧の通りの曇天。

翌朝、僕は頭のすぐ先で聞こえる足音で目を覚ました。9時半頃だっただろうか。
通路沿いにテントを張っていて、しかも頭を通路側に向けて寝ていたため、テント越しに耳に入る足音は、なかなかの音量だ。
それにしても、久々にゆっくり睡眠をとった気がした。

むっくりと起きあがると、じんわり来るような筋肉痛が両腕に感じられた。筋肉痛など身に覚えがなかったのだが、寒さにガタガタ震えていたり、高速を走行中に単車にしがみついていたりと、無意識のうちに腕に力が入っていたのだろう。
顔を洗うのと、朝食の分の水汲みにと、僕は水場へ向かった。空を見上げると、雨は止んでいたものの相変わらずの曇天である。
その後、昨晩と同じメニューの朝食を済ませた。違う点と言えば、テントの外で、キャンプ場の空気を満喫しながら食べられた点くらいだろうか。
焼き豚は昨晩よりも、少しだけスリリングな酸味が強くなった気がしたので、クッカーについているフライパンで炒めて食べたが、それはそれで、なかなか美味であった。無事、焼き豚は完食である。

朝食を終えると、昨晩までの道中にじっとりと濡れたレインウエアとフライトジャケット、そして濡れたものを拭ったタオルなどを、テントの上に広げて干した。
周囲を見回してみると、次のキャンプ場を目指して旅立っていったのか、他のライダーさんが張っていたテントの数は減り、残っているテントにも人気がない。

さて、どうしようか?
曇天ではあるが、スケッチができない天気ではない。僕にとってのスケッチとは、行動の記録という意味もある。曇天は曇天でスケッチする意味があるのだ。
とりあえず僕は、キャンプ場内から絵になりそうな場所を見つけられないかと、散策してみた。

スケッチのテーマは水辺のスケッチである。岬の先端にあるキャンプ場であるため、水辺という条件を満たしている場所には事欠かない。
が、キャンプ場を一周してみたものの、「ビビッ」とくる場所は見つからなかった。まあ、簡単に見つかるものではない。水辺なら何でもいいというわけでもない。
サロマ湖は、大変広い湖であり、見た感じは海と大差がない。
個人的には、海を描くのはあまり好きではない。水面の表情がどこも単一で、背景が映り込むことも少なく、つかみ所がない事が多いからだ。
寄せては返す波を描くのは悪くないが、ここはサロマ湖。海水湖とはいえ、波は立たない。
思っていたとおり、キャンプ場周辺はいわゆる海辺の風景っぽいところが多くて、今一つそそられるスポットは見あたらなかった。

僕は自分のテントからすぐ近くという希望を諦め、キャンプ場から離れてのスケッチをすることにした。昨日のうちに、二往復したキャンプ場へと続く道路沿いに、サロマ湖へ注ぐ川にかかった「潮見橋」という橋の辺りの風景が絵になりそうなのを覚えていたからだ。そこまで、歩いて行けなくはないが、移動時間は短いに越したことはないので、僕は単車に乗って出発することにした。

散策後に場所決定

とりあえず僕は、道具も持たないまま、「潮見橋」に向かった。
単車で3分も走らないうちに潮見橋に到着。橋周辺を見回すと、「北海道らしい」かどうかはともかく、荒涼とした川沿いの光景は、充分に僕のスケッチ心をくすぐるものがある。僕好みの水辺が続いている。
でも、ここは北海道。しかもサロマ湖周辺。やはりサロマ湖の湖面が入る絵を描いた方がよいだろう。そのために僕は、苦労してここまで来たのだ。
そう思った僕は、橋のサロマ湖に近い側の川岸に降り、水辺ぎりぎりの場所を探索した。
川岸というよりは、湿原、そんな感じだった。草が生えていない粘土質の地面を歩くと、靴がずぶずぶとめり込む。
草の上には、至る所に細長く、茶色い海草が緑の草を覆う網のように至る所に散らばっていて、なかなか独特な光景である。これらの海草は、風で飛ばされてきたのだろうか。
川の向こう岸も、草の生えたところと、粘土質の砂地と、細い川とが見事な縞模様をつくっている。川が注ぐ湖面の先にも、今にも水に隠れそうな砂地がのぞき、その上に羽を休めるかもめか何かの水鳥が数羽降り立っている。北海道らしい風景とは言えないかもしれないが、良い景色だ。大自然だ。
僕が好んで描くような、水面への映り込みもなく、じっとりとした湿度も感じられない所だが、こういう広々とした水辺の光景こそ、北海道らしさと言えるのではないだろうか。
手応えを感じた僕は、単車を止めた所へ戻り、自分のテントへ戻って道具を単車に積むと、ここと決めた場所へと戻り、折り畳み椅子をセットして、スケッチを始めた。確か、13時になろうかという時間だったと思う。

描き始めたものの……

スケッチを始めると、空を覆っていた雲も薄くなり始め、時折日が射し、青空がのぞくこともあった。
海とサロマ湖を仕切っている細長い陸地を背景に、広大なサロマ湖の湖面と、そそぎ込む川、そして川岸を盛り込んだ構図にして描き進めた。

普通にスケッチをする場合、自宅へ帰ってからも手を入れることもあるかと思い、写真を撮ることもあるが、今回はキチンと現場でスケッチを終えたかったので、それを肝に銘じる意味でも、敢えて撮影は避けた。
「どうして絵に描きたいと思うような場所があったのに、写真を撮っていないんだ?」と思う方もいるかも知れないので、一言付記しておこう。

川面は湖へ注ぐ流れと湖から戻ってくる流れとで複雑な表情を作る。水鳥が飛び去っては舞い降りるのが見える。やがてオジロワシだろうか、猛禽類がどこからともなく飛んできて、翼に風を受け、優雅に宙を舞っている。
こうして、風景を観察しながら、自然の中にポツンと身を置き、澄んだ空気を吸う。スケッチをしている時でなければ味わえない自然との一体感を、僕は存分に満喫した。
……のだが、寒い! あまりにも寒い。夏であることが信じられない。

北海道での初のスケッチ。
他に画像も無いことだし……小さいですが、お見せしましょう。北海道での初のスケッチ。
曇天だったのに、空が少し青いのは、翌日回復した天候を反映させたため。
筆の水分を調節するために持ってきていたティッシュペーパーを使い切るほど鼻水が流れ、膝もがくがく来ている。気温はそれほど低くないはずだが、継続的に吹き続ける風で、どんどん体温を奪われ続けていたし、足下が湿地で、天気が回復するにつれて水分が蒸発する気化熱で余計に気温が下がっているのかも知れない。
スケッチを始めて2時間半くらい経ったときだったろうか。僕はとうとう寒さに耐えられなくなり、撤収することにした。
慌てることはない。明日また続きを描けばいいのだ。予定を一日早めてここへ来たのだから、何も問題はない。また来るにしても、単車に乗って3分かからない。
また来たときのための目印として、傍らにあった大きな流木と、湿った柔らかい地面に自分の座っていた椅子がつけた深い跡を確認し、その場を離れた。

アイツとの遭遇とアレの調達

テントに戻ると、「何だか、本当に寒い思いばかりしているなあ」と思いながら、僕は引っ越しを敢行した。
昨日場所を決めたときには何も考えていなかったが、通路のすぐ傍では、人の通りが多くて落ち着かない。スケッチの続きを描くことを決めた以上、ここで連泊しなくてはならないから、少しは落ち着ける場所に移動した方がよいと思ったのだ。
テントや荷物を移動したりなどして体を動かしていたら、寒さも感じなくなっていった。やはり、ああまで寒かったのは水辺だったためだろう。
選んだ場所は、単車が固まっている区画の、通路から一番離れたところ。ここなら、人通りも気にならないし、調理をして煙が出ても迷惑はかからないだろう。

さて、そろそろ夕方という時間であり、夕食の準備をしなくてはならない。
僕は、一人用の食材が置かれていないキャンプ場近くのスーパーでの買い物を見合わせ、足を伸ばして希望の食材が手にはいるところを探すために、再び単車でキャンプ場を離れた。

国道へ出ようと前日に通った林の中の道を走行していると、またも見ましたキタキツネ。
すかさず単車を停め、デジカメを取り出したが、またもキタキツネは林の中へ。昨日見たヤツよりは少し大きい気がしたので、別の個体だろう。しかし、時折車が通るような道路付近に、そんなに何匹もいるものなのだろうか?

国道238号線を来たときと逆方向へと走り、数キロほど走ったところに大型のスーパーを発見したので、食パン、豚ロース肉、ピーマン、人参、モヤシ、シメジ、そして10gサイズにカットしてあるバター(東京では姿を消した雪印製。こちらでは健在なのか?)、袋入りの塩、胡椒などの調味料などを購入した。今日のメニューは肉野菜炒めである。
もっと北海道らしい食材も追加したかったが、一人で買っては半分以上腐らせてしまいそうな量でしか売られていなかったので諦めた。僕のキャンプ旅はまだ始まったばかりだし……と思ったが、いつになったら食べられるのやら……。

それからもう一つ、忘れてはならないものを僕は調達しなくてはならなかった。お酒だ。バーボンだ。
スーパーにもお酒は置いてあったが、一升瓶や750mlの大物ばかりだったので、他の酒屋を探すことにした。
スーパーからキムアネップ岬方向へ少し戻ると、酒屋さんが見つかったので入ってみたが、やはり品揃えは同じような感じだった。
「こちらには、小さいボトルのウイスキーなどは置いてありませんか?」と、店のおばさんに聞くと、
「小さいのだったら、コンビニエンスストアに行くとあるかも知れませんねえ」との答え。
「本当に伺い辛いことですが、この近くにありますか?」と聞くと、
「ああ、この先の次の信号を左折して……」と、おばさまは親切に教えて下さった。
どこの馬の骨とも分からないライダーにも、何と親切なことだろうかと、僕は妙に感動した。
お礼ということで、レジの横にあったガムを一個買って、懇ろにお礼を言って、コンビニへ向かい、無事Early Timesの200mlボトルとピスタチオをゲットした。

国道をキャンプ場方向へ走っていると、空が夕日で、少し紫がかった色に染まっているのが見えた。
台風が来る前の夕焼けがあんな色になるものだが、夕日が綺麗と言われるサロマ湖周辺では、普通の曇り空も独特な色合いになって見えるのだろうか。
写真を撮ろうかと思ったが、明日は天気が回復するかも知れないから、その時に撮ろうと思い、キャンプ場へとひた走った。

やや失敗の夕食と挑んだおすそ分け

キャンプ場へ戻ってくると、すっかり薄暗くなっていた。
スケッチに没頭し、昼を抜いた強烈な空腹感に駆られ、野菜を洗ったり切ったりなどの作業をテキパキとこなし、僕は食事の準備を終えた。
水場から戻ると、テントの脇に防水シートを敷き、食材やストーブなどを並べ、バターを溶かして、食材をジャーっと炒め、火が通ると食パンに挟んで食べた。
火が通ったかと思う頃に、塩と胡椒をかけて味を付けたのだが、暗いのと、袋から振りかける塩の加減が難しい。妙にしょっぱい所と何も味のしないところとがあったが、お腹が空いていたので、ガツガツと貪るように食べた。
ガスストーブは、なかなか火力が強くて良いのだが、火加減が難しい。うっかりすると火の通りにくい人参などでも、コゲコゲになってしまう。
肉の下味くらいは先に付けておけば良かったし、人参などは、もう少し小さく切っておけば良かった。なかなかキャンプの食事も難しいものだ。

この日の食事。
この日の食事。種々失敗したところはあったが、気分は味わえた。
そんなふうにして、食パン3枚分も食べるとすっかり満腹になった。北海道へ来てから、普段食べる量の6~7割くらいしか食べていなかったので、少々胃も小さくなっているのだろうか。
肉も野菜も、まだ少し残っている。でも、これを食べきるのは、少々キツい。かといって、捨てるのも憚られる。
困った僕は、辺りを見回した。
まずは、数人集まってすでに宴会を始めているライダーさんたちが目に留まったが、あの様子では食事は終わっていることだろう。さらに見回すと、自分のテントからすぐ近くに、まさに今からストーブに鍋をかけようとしている女の子の姿を発見した。どうやらその子もソロキャンプをしているようで、買い物から戻ったときに、軽く目礼をしてくれた子だった。
さらに見回してみたが、これから食事という雰囲気の人はいない。かといって、相手が女性だとさすがに声をかけにくい。あっさりと断られては、何ともバツが悪い。妙な下心があると思われるのも抵抗がある。

ちょっと迷って、残っている食材に視線を落とすと、
「もう私は要らなくなったの? 捨ててしまうのね」と、悲しげに訴えかけているように見える。
ええい、ダメモトだあい! と思い、僕はその子に声をかけることにした。けんもほろろに遠慮されたにしても、すっかり暗くなっているので、それほど人から見られることもあるまい。

「あの……晩ご飯は済まれましたか?」
「あ、これからですけど……」
「良かったら、こっちで召し上がりませんか? 食べきれなくて困っているんです。お肉とかもあるんですけど……」
「え、本当ですか? じゃあ、頂こうかな」
「どうぞどうぞ。大したものは無いんですけど」と、僕は心底ホッとした。
「じゃあ、ちょっと待ってて貰えますか?」どうやら、その子はとりあえず準備していた物を食べるらしい。
「いつでもどうぞ。僕のテントはすぐそこですから」と言い、僕は食後の紅茶と煙草を喫しながら待った。
僕はストーブに火をつけ、「本当に残り物で申し訳ないんですが……。済みませんが、色々加減もあるでしょうから、ご自分でお願いしますね。塩と胡椒しか無いんですけど」と言い、食材の入ったザルを彼女に差し出した。
他の人が食べる事になるのなら、もう少し丁寧に切れば良かった……と、厚さのバラバラな人参を反省しながら話を聞くと、その子は神奈川県に住んでいて、北海道へ来て三日目くらいと言っていただろうか。
たびたびこうしたソロキャンプをしているそうだ。頭につけたライトで手元を照らしながら食事を摂る姿に、慣れが感じられる。
僕が食事を薦めたのに快く応じたのも、こう言うことには慣れているからなのかも知れない。
昼間はテントの中に重い荷物を残し、あちこちを回ってきたらしい。昼間に見た他の人気のないテントも、同じようにして走り回っていたライダーさんだったのだろう。
「さっきは近所で売っていたホタテを茹でて食べていたんですけど、キャンプに来るとロクなものを食べないんで、お肉は有り難いですねえ」
そんなものなのだろうか。まあ、単車に乗って走り回ると疲れるのは事実だし、女の子でも食事を作るのが億劫になるのは事実だろう。昨晩僕がヘトヘトに疲れていながらも食事らしい食事をしたのは、わざわざ持ってきた焼き豚を腐らせないための執念のなせる業だったのだから。
「それなら良かったです。ところで、あっちで宴会をやっているみたいですけど、参加しないんですか? 僕はこの後参加しようかと思っているんですけど……」
「さっきも声をかけられたんですけど、今日は疲れているんでいいです。明日も長距離走る予定だし……」
なるほど、ツーリングに来ていれば、走るのが第一の目的として行動をとるのが、姿勢として正しいと言えよう。宴会に参加するのを楽しみにしている僕のような不真面目ライダーばかりで無いだろう。

「そうですか。あまりお酒は飲まない方なんですか? バーボンならありますけど」と言ってみたが、
「飲まなくはないですけど、バーボンはちょっとキツいからいいです」とのお答え。まあ、そりゃそうだろう。
「単車が近くに見あたりませんが、何に乗っているんですか?」
「BMWのオフです。あんまりオフに見えないだろうけど……」
「BMWと言うことは、大型ですね? 何とまあ、立派な単車に……。そう言えば……明日はどうされるんですか?」一応続けて聞くと、場所は忘れてしまったが、どこかの友人に会いに行くとのことだった。
「そうですか。僕はですね、スケッチ旅行に来てまして、明日も続きを描く予定なんです。あ、ちょっと待って下さいね……」と、僕は今日途中まで描いたスケッチをテントからスケッチブックを持ってきて見せると、その子は、頭に付けていたライトをともして、「わあ、スゴイ。綺麗ですねー」と、感想を述べてくれた。
「スケッチブックが新しいんで、他には一枚しかお見せできるのが無いんですが、水辺の水彩画を中心にした個展をやろうと思っているんです」と、ページを戻して、立川にある昭和記念公園の池を描いたスケッチも紹介した。
「そうなんですか。こっちのもスゴイですねえ」と言いつつ、食い入るように僕のスケッチを見ていた。何だか照れ臭かったが、自分の作品が納まっているスケッチブックなどを持っていると、こう言うときにコミュニケーションを取りやすくなる事もある。
食事も終わり、一段落付いたところで、その子は引き上げていった。パソコンを持っていて、HPも持っているそうなので、僕のHPのURLも出ている名刺を渡しておいた。

いざ参加!

その子を見送り時計を見ると、まだ宵の口だった。
折角宴会が繰り広げられているのだし、こちらにもお酒の用意はある。これは参加するしかあるまい。
そう思った僕は、ライダー宴会デビューすべく、ボトルとピスタチオを携え、声をかけた。
「こんばんは。お酒持参なんですけど、混ぜて貰っても構いませんか?」
「ああ、どうぞどうぞ」と、皆さん快く僕を迎えてくれる。
「持参じゃなくても、ここに一升瓶もありますよ」と、ランタンや場を提供しているらしき男性が一言。見ると2割くらい減った日本酒の瓶がデンと置かれている。
「あはは……なるほど。僕は小さい瓶ですがバーボンを持っています。欲しい方がいらしたら、遠慮なくどうぞ」僕がそう言うと、
「あ、じゃあ、ちょっと貰っていいですか?」と、僕の向かい合う位置に座っている、口と顎に髭をたくわえた見るからにキャンプしそうな男性がカップを差し出した。風貌に加えて、パイプ煙草まで持っているという念の入りようだ。
「どうぞ。バーボンを割らなくても飲める方が、僕以外にもいらして良かったです」と、僕はお酌をした。
そんな風にして、乗っている単車と出身地を明かす程度の自己紹介をして、無事僕はライダー宴会のデビューを果たすことが出来た。

酒席の面々

主催者(?)の男性は、関西から来ているそうで、例年は単車で北海道へ来ていたが、今年は彼女がキャンプデビューという事で、車で来たのだそうだ。
「私にもバイクに乗れ乗れ言いよるんですよ」と、彼女。

「彼女が1200ccに乗っていて、彼氏が250ccで、北海道で知り合って結婚したいう話も聞いたことありますよ」と語る、パイプの方の左に座っていた男性も関西出身だが、今は名古屋在住だそうだ。そして、パイプの男性も関西の方だった。
僕の左隣にいた酒席唯一の学生さんが千葉から来ているそうで、「関東勢が増えてうれしいっす」と言ってくれた。
ずっと「宴会」と表記してきたが、飲めや唄えの大騒ぎをしているのではなく、時折笑い声が聞こえてきた程度の酒席である。参加者は、おのおのの経験、体験談を披露し、僕のような初心者は北海道ツーリングに関して、質問したりなどするのだ。
「そう言えば、あっちの林の中の道で、キタキツネを見たんですけど、この辺って沢山いるんですか?」と、僕が聞くと、
「キタキツネは、北海道では野良犬みたいなモンですから、あっちこっちおりますよ。キャンプ場を荒らしたりするし」と、主催者さん。なあんだ、そうだったのか。別にラッキーでも何でも無かったのだ。
そう言えば、キタキツネに靴や食べ物を持って行かれたという話は、どこかのHPで読んだのを思い出した。

ホクレンの旗。円内に熊のイラストと「ゆっくり走るベアー」と力の抜けるコメントが……。
ホクレンの旗。円内に熊のイラストと「ゆっくり走るベアー」と力の抜けるコメントが……。

その時の宴会に参加していた方々は皆、ソロツーリング、ソロキャンプの経験者で、初めて北海道に来たというのは、主催者さんの彼女さんと僕くらいのものだった。
パイプの方と主催者さんは数回に渡って北海道に来ているというベテランで、北海道ツーリングに関する話題も豊富だった。
「この辺りの蚊は、ジーンズの上からでも刺してくるほど凶暴だ」
「キャンセル待ちで10時間も待つとなると、待合所から宴会が始まる」
ピースサインの代わりにスタンディングしてパラパラを踊って見せていたら、もの凄い台数のグループで、失速して転倒しそうになって困った」
ホクレンの旗が欲しいばかりに、1リットルくらいしか入らないのに給油したことがある」 などの、楽しい話を伺った。
ちょっと補足すると、昔から北海道に来るライダー同士は、すれ違うときに左手を挙げて挨拶をする。昔はピースサインだったが、最近は皆思い思いのスタイルで挨拶をするのだ。当時の名残で今もそれをピースサインと呼ぶらしい。
もう一つ補足すると、ホクレンというのは、北海道にある(どうやら農協系列)ガソリンスタンドで、ライダーが給油するときに「下さい」と言うと、貰えるのが旗なのだ。道北、道東、道南と、3色あり(画像参照)、ライダーたちはそれを全て揃えたいと思うそうだ。
「アレは、何の旗なんだろうと思っていましたよ。現金カードを持っているENEOSでばっかり給油していました」と苦笑いしながら僕が言うと、
「ホクレンの旗は必須アイテムですよ。貰った方が良いですよ。去年なんか、品切れだったんですけど、代わりに2000年のを貰っちゃいましたよ」と、名古屋の方。
集めるかどうかはさておき、あの旗の謎が解けた。

話が盛り上がるとお酒も進む。パイプの御仁におすそ分けしたにしても、あっと言う間に小瓶を空けてしまった僕は、主催者さんから2、3杯も日本酒を頂いてしまった。

空を見上げると、沢山の星が出ていて、みんなでしばらく空を見上げた。僕にはぼんやりと天の川が見えた。明日はいい天気になるかも知れない。

「さて、12時過ぎたし、そろそろ寝ますわ」と、主催者さんが言うと、皆腰を上げ、挨拶を交わしたのちテントへ戻った。皆、宴会は好きみたいだが、すべからく正当派ライダーのようだ。
僕もいい加減に酔いが回っていたので何の未練もなく床についた。本当に楽しい宴会だった。
斯くして僕は、ライダー宴会デビューを円満に、楽しくクリアできた。お付き合い下さった皆さん、有り難うございました。(感謝)

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