便利に毒されし者の北海道おっちょこちょいスケッチ旅行・2002年

晴天のスケッチと北海道っぽい食事

8月12日・スケッチと別れと

目が覚めると、「一体ここはどこ?」と思うような晴天だった。
前日分の旅行記に画像が少なかったので、この日の分はちょっと多めに画像をご覧頂こう。

晴れ渡った空が嬉しくて、三脚とリモコンを使って撮影。
晴れ渡った空が嬉しくて、三脚とリモコンを使って撮影。これが普通の夏のキャンプ場の空だよなあ。
管理棟や他のライダーさんの単車をバックに自分のテントと単車を撮影。
管理棟や他のライダーさんの単車をバックに自分のテントと単車を撮影。引っ越したのを分かっていただけると思う。
サロマ湖岸からの風景。
サロマ湖岸からの風景。これくらい良い天気なら、ここを描いても良かったと今にして思ったりする。ピンク色の花の名前は……調査中。

正統派ライダーさんたちは、僕などより先に目を覚ましていて、朝食を摂っている人がいるどころか、撤収の準備をしている人までいた。皆生き生きと行動しているように見えた。僕同様、北海道へ来てから、ずっとスッキリしない天気に見舞われていたであろうから、当然である。
僕のテントの近くに居を構えていた、昨晩のパイプの御仁と目があったので、「いやあ、いい天気になりましたね」と声をかけると、「ホントに嬉しくなりますねえ」と、抑えきれない笑顔を見せた。
僕の方も、前日分のスケッチはたっぷり時間をとったにしても1、2時間で終わる。それから移動しても、第一目標としていた三里浜キャンプ場には明るいうちに到着できるばかりか、夕陽のスケッチもモノに出きるかもしれないと思えた。この天候が続けば、充分期待できる。

キムアネップキャンプ場の様子。
キムアネップキャンプ場の様子。炊事場は、キレイとは言い難いが、お客さんはきれいに使っていた。

僕は、昨日食べきれなかったキュウリと残った食パン、カップスープで朝食を済ませた。残り物の適当な食事ではあるが、気分はウキウキしていた。

朝食を摂りながら周囲を見ていると、昨晩夕食の提供に応じてくれた女の子も、いそいそと撤収の準備をしている。流石は正当派ライダーだ。
僕と視線が合うと、ハタと思いついたように近づいてきて、「写真、いいですか?」と声をかけてきた。見ると、手にデジカメを持っている。
うろ覚えだが、テントの傍に停めていた単車と僕とを撮ってくれたような気がする。
「僕も、デジカメを持ってますので、撮らせて貰っても構いませんか? なんならバイクと一緒に撮りましょうか?」
「それじゃあ、お願いします」

夕食を食べてくれた女性。
夕食を食べてくれた女性。画像を加工したくないのだが、連絡が取れないので、今のところはご容赦を。連絡頂けると良いのだが……。(汗)
……と言うことで、駐車場へ移動し、パチリ(デジカメはこんな音はしないけど)と撮ったのが右の写真。
僕の予想と違わず、立派な単車に感服したが、なぜ駐車場に置いているのかと聞くと、サイドスタンドが地面にめり込んで倒れたら自分で引き起こせないから……とのこと。それでもこんな大きな単車に乗っているのだから、見上げた根性だ。流石は正当派ライダーだ。でも、倒れたら僕が起こしてあげたのに……。
「あの……私のカメラでも撮って貰えますか?」と、その子はデジカメを僕に渡すので、リクエストどおり撮ってあげたが、「電池を節約したいので、プレビュー画面は消してあります」とのこと。キチンととれたのやら……。
その後、おのおののテントへ戻り、その子はパッキングを、僕はスケッチの準備をすると言うことで、「お互い、無事で良い旅を」と挨拶を交わした。メールなりなんなり、連絡をくれると良いのだが……。

さて、スケッチへ行くとなると、昨日宴会で一緒だった方々をこの場で見送ることが出来なそうなので、僕は先に挨拶に回ることにした。
「厚かましくガブガブ飲んで、申し訳ありませんでした。良いお酒でした」と、片付けの真っ最中であった主催者さんには、詫びと礼を付け加えたが、「いやあ、そのお陰で僕らも楽しかったですから、全然いいですよ」と言ってくれた。
「どうかこの後も、安全で楽しい旅を」と、皆さんに挨拶を終えた僕は、スケッチの準備へとテントへ戻り、スケッチの準備を済ませ、他のライダーさんより一足先に、キャンプ場を離れ、潮見橋へと移動した。

サロマ湖の盲点と気持ち良い別れ

橋に着いて、昨日同様サロマ湖側の川岸に降り立った僕は、「ん?」と、声に出して言った。
昨日と様子が違うのだ。川岸の面積も、水面から覗く砂地も、川幅も、全てが違うのだ。
要するに、サロマ湖が海と繋がっている湖であるがために、潮の満ち干があることを、僕はすっかり見落としていたのだ。
何のことはない、草の上を覆っていた海草も、潮の満ち干で陸地に取り残されたものだったわけであり、大きな流木が所々にあったのも、よく考えれば潮の満ち干のなせる業だ。
僕が昨日場所をとっていた辺りを見ると、今のところは水没していて、今すぐに続きを描くわけには行かない様子だった。
僕はしばらく途方に暮れたが、すぐにどうすべきかを瞬時に判断した。
「潮の引くのを待ちつつ、スケッチをしよう!」
この辺りから、サロマ湖の湖面が入るスケッチは、もう済んだも同然。後は、北海道にある、僕好みの場所をスケッチしたって、ちっとも構わないではないか。
時計を見ると午前9時過ぎ。昨日スケッチを始めたのが昼頃だったから、3時間もすれば昨日の水位に戻るだろうし、小さいスケッチブックなら充分に作品として仕上げられるだろう。
僕は、サロマ湖を背にした位置の、引いた潮に取り残された水たまりのような池の傍に場所を選んだ。

セッティングをしながら、「最近絵を描く時間がめっきり減ってはいたけど、まだまだオレは絵描きだなあ」と、スケッチ出来るようになるのをスケッチしながら待とうとするポジティブさを、我ながら嬉しく思った。
本当はここ以外にも描きたいと思った場所があったのだが、白樺の木(下の画像では分かりにくいか)の入る「北海道らしさ」の方を選んでしまった。こういうのも「お上りさん的思考」と言うのだろうか。勿論、充分な手応えを感じる風景だったから描いたのではあるが。

それにしてもいい天気だ。
強烈に照りつける日差しで、スケッチしていて目が痛くなってくるほどだったが、その痛みすら心地よいほどだ。
昨日まで寒いことが多かったのに、長袖など着ていては暑くて仕方ない。ああも曇天が続いていた中、誰がこんな好天になることを予想できただろうか。
すっかり気分が夏に戻った僕は、暑かったこともあって、タンクトップ姿になった。が、やがて、これでは妙な日焼け後が残ると思い、タンクトップまで脱いだ。どうせ滅多に人など見ていないのだし、そもそも僕は男だ。

じりじりと照りつける夏の日差しの中でスケッチをしながら、「ああ、こんな事ってどれくらいぶりだろうか」などと考えた。

すると、背後からホーンの音。明らかに単車のものだ。振り返ると、宴会で一緒だったパイプの御仁だ。路肩に停めた僕の単車を見つけ、僕だと確信して手を振っている。僕も負けずに筆を持ったままの右手を大きく振って見せた。
そんな風にして、千葉の学生さん、元関西で今名古屋の方、最後に、車で来ていた宴の主催者さんカップルがホーンやクラクションを鳴らし、手を振りながら通り過ぎていった。

「キャンプ場で会って、宴会をやって、その場で別々になって、でもその後別のルートで同じ場所でバッタリ会って……それがいいんです」と、宴会の時にパイプの御仁が言っていた。ああして挨拶して走り去っていった彼らを見た僕は、彼の言うことが何だかよく分かる気がした。
名前も聞かないまま、またどこかで会うかもね……と、別れていく。気持ちよい出会いであり、別れであるかも知れない。

2枚目のスケッチと言える作品を(しぶしぶ)紹介。
2枚目のスケッチと言える作品を(しぶしぶ)紹介。

それから3時間ほど、目がチカチカしてくるのをこらえながら、無心に炎天下のスケッチに挑み続けた。
よし、こんな所だろう! 小品ながらまずまずの出来。僕の水彩画の持ち味をそれなりに盛り込むことが出来たのではないだろうか……と思えたのだが、きちんと仕上がりを確認できないほど、目がかすむ。3時間弱、照りつける日光の下でスケッチをしていると、斯くも視力を酷使するのだ。大変なんですよ〜、夏のスケッチは〜。
振り返って、昨日選んだ場所の方を見ると、潮が引いて地面が姿を現しているのはぼんやりと分かる。今すぐに移動すれば、続きを描くことが出来るだろう。しかし、現状の視力では続きを描くのは難しい。
「ご飯にしよう♪」僕はそう決めた。丁度お昼時だ。
北海道へ来て3日目。そろそろ普通に外食を決め込んでも良いと思えたし、食事を摂っている間に視力も回復するだろう。たしか、国道に出たらすぐにドライブインがあったはずだ。
僕は荷物を置き去りにして単車を停めたところへ行き、ヘルメットを被ろうとした。
「痛いッ!」
何だこれは。耳が……特に左の耳がビリビリと痛い。そうか、日焼けしたんだ。そう言えば、左肩や左手、主に左側の皮膚がヒリヒリする。僅か3時間程度で、こんなにまで日焼けするのだろうか? 上陸後、これでもかと冷やされた後は、こんがりと焼かれてしまったようだ。全く北海道の気候は容赦がない。
ともあれ、食事だ。こんな事にへこたれてはいられない。

ドライブインで食べた「ホタテフライカレー(800円)」。
ドライブインで食べた「ホタテフライカレー(800円)」。なかなか美味しかったが、インパクトの強いカレーの味のためホタテの繊細な味わいを楽しめなかった。別々に食べる方が良いかも。
単車で3分も走ると、記憶にあったドライブインを見つけた。単車を停め、ヘルメットを取ろうとすると、またも耳に強烈な痛みが……。これから何度もヘルメットの脱着を繰り返すというのに、こんな事になるとは……。

痛みと絶望感から涙目になりながら、通された席でメニューを見ると、北海道らしい海産物を使ったメニューがズラリ。でも、予想していたよりもお値段が高い。ドライブインだからこんな物だろうか。
本当は生ものが食べたかったが、値段との妥協点を「ホタテフライカレー」に定め、オーダーした。
産地で食べれば安い……というのは、幻想だったのだろうか。
とはいえ、久々にマトモなものにありつけ、どこかホッとしたような気持ちになりつつ、満腹感を得た。昨晩まで作って食べたものだって、マトモでなくはなかったと思うが……。

戻って読む

次を読む

02年の旅行記のtopへ

旅行記のtopへ

美術館に戻る