便利に毒されし者の北海道おっちょこちょいスケッチ旅行・2002年

岬巡りとウニ丼と……

この日から、旅行の様相は少々変わる。画像も沢山あり、ネットで紹介される旅行記らしくなってくる……と思う。

8月14日・もう一度宗谷岬へ

ライダーハウス238の様子。
ライダーハウス238の様子。一番奥が宿泊用の建物。その手前がガレージ。

目を覚ますと、まるで最初から僕一人だったかのように、お二人の姿は無かった。荷物やゴミなど、奇麗に片づいていて、おいてあるのは僕の荷物だけであった。
起き抜けにそれに気づいた僕には、ギョッとするほどの片づき具合であった。
窓から様子を伺うと、曇ってはいるが、降りだしそうな気配はない。
ペンションなどでも見る「宿泊した感想を書くノート」みたいなヤツにも、お二人のコメントはなかったし、片づける物音もしなかった。
昨晩、お二方と楽しくお話したのは幻覚か夢だったのでは……とまで思ったが、デジカメを見ると、確かに写真は残っている。
恐らく、早朝に目を覚まされたお二方は、雨も上がっていたし、一刻も早く出発されたかったのだろう。
あれだけいろいろと気を遣って貰ったのだから、挨拶くらいはしたかったなあと、自分の寝坊助を呪わしく思った。
書き置きくらいしてあっても良さそうな……と思ったが、それらしきものは見あたらなかった。まあ、「宿泊した……ノート」に僕宛の伝言を残すのも変な話だし、せっかく雨が上がったのだから、少しでも早く出発したいという気持ちはよく分かったし、「俺たちは出かけるのだから、起きて挨拶せよ」とばかりに、寝ている僕を起こすのを遠慮されたのだろう。
僕もノソノソと起き出し、特別急ぐ必要もなかった僕はのんびりと片づけを終え、声のノートにコメントを書き込み(何と書いたかは失念した)、パッキングを済ませた。

出発しようとしていると、管理をしている家のご主人らしき方が現れ、「いやあ、異常気象ということもあってか、夏でも寒いですねえ」などと、立ち話をした。ご主人は、本業が漁師さんらしく、もとは雀荘だった離れを、ライダーハウスとして使うことにしたのだそうだ。そういえば、自動雀卓も置いてあったし、壁に点数の計算表もあった。
「この後も、事故には気をつけてな」というご主人に、「お世話になりました。また来ることもあるかも知れません。その時も宜しく」と挨拶をし、ライダーハウスを後にした。お世話になりました。

とりあえず僕は、昨晩決めたとおりに、宗谷岬へ向かった。実際逆戻りだが、ほんのちょっとの事だ。
昨夜の僕と来たら、自分の泊まる場所への到着が最優先であり、本土最北端など二の次だったのだ。よく考えると変な話だ。
程なく宗谷岬に着いた。昨夜と打って代わって、礎や銅像が立っている辺りは大にぎわいだった。
駐車場にも車や単車がひしめき合うかのように並んでいて、とにかく分かりやすい観光地の雰囲気を醸し出していた。何しろ「日本最北端」なのだから、雨でも降っていなければ当然だろう。
僕も単車の並んでいる辺りに場所を見つけ、単車を停めた。
ヘルメットを取り、「最北端」の場所を見てみたが、感動らしいものは感じなかった。結末を先に知ってしまった映画を鑑賞している感じと似ているだろうか。

林蔵さん、カブってしまってご免なさい。
林蔵さん、カブってしまってご免なさい。ともあれ、公共施設は大切に使いましょう!(立て札のこと)
とりあえず、写真でも撮るか……と思った僕は、デジカメと三脚を取り出し、単車を停めたところから100mほど先にある最北端のモニュメントがある辺りまで向かってみることにした。
ふと気付くと、駐車場から「最北端」へと向かう途中の芝生の上に、何やら立て札のようなものが落ちているのに気が付いた。拾ってみると、「日本最北端の地 宗谷岬」と書かれ、今日の日付を示すパネルがはめ込まれている。どこに立っていたのか見回したが、それらしい場所は見あたらない。誰かがあるべき所から引っこ抜いたか何かして、所構わず放置したのだろう。随分なことをするヤツがいるものだ。
ともあれ、この立て札を持ったままウロウロしていては、他の観光客にそんな愚劣なことをしたのはコイツかと思われそうだったので、ここへ来た人の目に留まるように、立て札をベンチに慌てて立てかけ、ついでに間宮林蔵さんの銅像をバックに、三脚を立てて写真を撮ることにした。
幸い、その角度だと人通りも少なかったので、楽に撮影できたのだが……デジカメを蹴飛ばされたり盗まれたりはしまいかとハラハラしていたため、間宮さんの銅像に、バッチリ重なって写ってしまった。
ご覧の通り、単車がズラリ。
ご覧の通り、単車がズラリ。皆、雨の上がるのを待ち望んでいたんだなあ。
最北端から臨む海。
最北端から臨む海。もうちょっと晴れていればねえ……。

「最北端」付近に近寄ってみると、モニュメントの他に、唱歌(?)の『宗谷岬』の歌詞を刻んだ石碑や、江戸時代後期に樺太が島であることを実証した(辞書丸写し)間宮林蔵さんの銅像なども立っている。
どれも記念写真を撮りたい人たちが群がっていて、列を作っている。行列するのが大嫌いな僕は、その周辺での撮影を諦め、比較的人通りの少ない所で、「宗谷岬っぽい所」の写真を撮った。(画像参照)
それにしても、やはりこういう場所へは、もう少し感動を伴った到着の仕方をしたかったなあ。

さて、どうしたものか……。
特別な感慨も無いまま宗谷岬を後にした僕は、単車に乗ってから考えたが、自分が回ってきたルートを考えると、日本海側を回るのが順当だし、ちょっと行けばノシャップ岬がある。とりあえず岬巡りとしゃれ込もうか。
北海道のことを良く知らない僕は、「ノシャップ岬」とは「納沙布岬」を、より北海道の言葉に忠実に発音したもの……とか思っていたが、ノシャップ岬は宗谷岬の隣にあり、納沙布岬は根室半島の先端にある事を後で知った。謎の動物クッシーで有名になった屈斜路湖が道東にあるかと思えば、昨日通ってきた国道238号線ぞいにクッチャロ湖もあったりする。なかなかややこしい。

観光モードで岬めぐり

ノシャップ岬の立て札。
ノシャップ岬の立て札。2人以上で来ていれば、ここで写真を撮るのもアリだったかも知れないが……。

などと考えていると、稚内の市街地を抜け、ノシャップ岬へ到着。
ここも、観光地然としていて、土産物屋や、ウニ丼屋などが立ち並んでいる。岬の先端周辺は、ノシャップ公園と呼ばれているようだ。
特別駐輪場らしき場所が見あたらなかったので、先客の単車に倣って単車を停め、例によってデジカメを携えて記念碑のある場所へ行ってみた。まあ、他にすることもないしね。
ノシャップ岬の立て札がある辺りも、宗谷岬と同様で記念写真を撮りたい人たちが列を作っていて、「げ~」と思った僕は、人が入れ替わる一瞬を狙って、立て札の写真を撮った。
はたと気が付くと、ポツリポツリと雨の滴が……。「げげげ~っ」と思ったが、それほど強い降りになりそうな気配はなかった。また降られるかと思うと、本当に気が滅入ったが、それは杞憂であった。まあ、続きを呼んで下さいませ。

公園内から撮った灯台と単車を停めた所。
公園内から撮った灯台と単車を停めた所。

とりあえず、デジカメを濡らしたくなかったし、「宗谷岬の次に最北端の岬」では、特別な感慨も無かったので、ヘルメットを被り、とりあえず公園を離れることにした。

僕の単車の隣には、到着したばかりでひと休み……という感じで、アメリカンの大きな単車にまたがったまま、煙草をふかしていた初老の男性がいて、目が合ったので、目礼をした。立ち話でも……と少しは思ったが、ポツポツ来ている雨が気になったので、単車を出した。

軒を連ねているウニ丼屋を見ているうち、僕はまだ、ホタテフライカレー以外に北海道らしいものを食べていないことに気が付いた。
今の僕は観光モードだし、こうした観光地でウニ丼を食すのもアリなのでは無いだろうか。そんなに安いものでは無いかも知れないが、そう言う贅沢もちょっとくらいはしてみたい。時間は11時頃で、昼にはやや早いが、朝も食べていないし、まあ良かろう。

僕は、単車が沢山並んでいるウニ丼屋を選び、単車を停めた。ヘルメットを取ろうとすると、「ライダーさんお一人ご案内でーす」と、店の入口の前から若い女性の店員さんが声をかけてきた。
おいおい、単車を停めただけでご案内かあ? 中を覗いて、いくらするのかを見て、高いようなら他を当たろうと思っていたのに。まあ、どこへ入っても似たようなものだろうけど。

付近にいたカモメ。
付近にいたカモメ。
言われるがまま店内へ入り、席に通された。メニューを見ると……た、高い。軒並み2000円を超す料金だ。どの程度のものにしようかと考えていると、店主さんと思われるおばあさんが近寄ってきて、
「オレンジ色の字のヤツを食べれば、ステッカーとバンダナが付くよ」とのこと。余りに考え込むのもみっともないと思えたこともあって、景品付きで一番安いウニ丼を選び、注文した。もう、何だっていいや。

店内を見回すと、ライダーさんたちがほぼ例外なく「私ってこんなにちゃんとしたウニ丼を食べたのって初めて」と言いながら、ウニ丼を食べていた。名産品の食べ物屋であるためか、女性ライダーの比率も多かった。
僕の斜め前には若い女性の二人連れが座っていて、美味そうにビールを飲んでいる。「何故ライダーがビールを!?」と思い、話を聞いていると、彼女たちの愛車は自転車のようだった。
自転車は自由でいいなあ……と、三里浜キャンプ場の口ひげさんのことを、チラリと思い出した。
間もなく彼女たちの注文したものは運ばれてきたが、「あ、食べる前に写真、写真」と言い、デジカメで丼の写真を撮っていた。(……同じ事を僕もやろうと思っていたのに、やりづらくなったじゃないか)と思ったが、しょうがあるまい。

見よ! これがウニ丼だ。(涙)
見よ! これがウニ丼だ。(涙)(税、バンダナとステッカー代込み、3500円)
僕のちょっと後に、一人旅のチャリダー(自転車旅行をする人たちのことを、ライダーに対して俗にこう呼ぶ)さんの、若い男性が入ってきて、僕の目の前に座った。彼は、僕同様、メニューを見て驚愕の表情を浮かべ、おばあさんから景品の説明を受けたが、「僕は三色丼(2000円)でいいです」とキッパリと言った。
それを見た僕は、つまらない見栄を張ってしまっていた自分に気付き、チャリダーさんの勇気と正直さに感服し、気恥ずかしく思った。
やがて、僕のもとへもウニ丼が運ばれてきた。ウニ丼という名前だが、カニの身をほぐしたものや、ホタテ、イクラなども一緒に盛られており、それなりのボリューム感もあったので、なかなか壮観ではあったが、「これで3500円かあ」と思うと、味覚が鈍る思いであった。まあ、実際に美味しかったとは思うが……。

何となくスッキリしない後味の食事を終えた僕は、自然なルートとして、日本海側の道道106号線へ向かうことにした。
どう考えても来た道を戻るのは勿体ない気がするし、ライダーハウスでご一緒したお二人も、「あそこは行った方がいいですよ」と仰っていた。
通称オロロンラインと呼ばれるその道道は、サロベツ原野という景勝地をかすめて通る、ライダーなら一度は訪れるべき道……なのだそうだ。
出発前のネットによる情報収集でも、オロロンラインを走った時の感動を綴った旅行記を、2、3編読んでいだ。

稚内の市内のホームセンターでランタンやストーブのボンベを購入した時に、そろそろガソリンを入れた方が良さそうな頃合いであることに気が付いたが、折角集め始めたホクレンの旗が欲しかったので、次にホクレンのスタンドを見つけた時でいいやと思い、そのまま出発した。最低でも数十キロは走れそうだし、それまでには見つかるだろうと思っていたのだが……。

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